※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。
AEG S2 E4 『Tri-and-a-Half-a Lon』『トライハーフロン』
監督: キャンベル・ブライアー
脚本: デニース・ダウナー
内容: 仲間たちが作った障害物競技に向け、ニアは努力しようとする。
【このエピソードについて】
最初に観た時は、子ども向けにしては時代とも合わない昭和のスポ根漫画を読んでいるような気分になり低評価をつける気でいましたが、2回目を観て自分の評価が変わりました。ここには「ひたむきに努力をすれば変われる」、「特訓は必要だが無茶は禁物」、「ゲームは楽しむもの」といった3つの良いメッセージがあることと、その上で大げさなエンタメ性に富んだ笑えるエピソードなのだと気づきました。
まず、ニアの真面目さと、焦りを感じると視野が一点張りになる特徴を、以前に展開してきたものとは別のやり方で表現・教訓を学ぶ主役に持ってきているのが良いですね。仲間たちとの会話も良くて、「ゲームは楽しんだもの勝ち」なのは本当にその通りだと思いますし、「勝った余裕があるからそう言える」というニュアンスのニアの発言にも共感できます。
私が『スプラ』を遊んで頭の中でせめぎ合っていることと一緒(笑)
サンディーとカーリーが大げさなスポ根コーチ役なのが最も面白い瞬間ですね。自分より大きいニアに「Hey kid」と声をかけたり、「誇らしい」と涙を浮かべたり。別の場面ではニアの無茶な特訓を見て指摘する描写があるので、それがはちゃめちゃではないのもミソ。
思うに私の場合、もし従来のシリーズでやっていたなら「機関車は性能なので努力でなんとかなる体の作りはしていないし、一日中走り続けるには限界がある」と、指摘したことでしょう。AEGはその理屈が通らないアニメのようなのでその指摘は野暮だと考えております。
水を補給して動く*1彼らがどうやって休みなしに走り続けているのかは確かに疑問ですけどね。急いで水を汲む場面でもあったら良かったのに。
練習を無理しすぎると、体を痛めたり思うように実力を発揮できなくなることを落とし込んだのも好きですね。もしそれを重点に置くのなら競争に失敗するとより説得力が増すのですが、それでは二度失敗することになって後味が悪いですからね。
努力次第で成功を収めることで子どもたちに勇気を持たせられるし、かといって楽しいゲームに熱くなりすぎちゃうのも良くはない。そこでエンタメ性を持たせたのも良かったし、「楽しむための競走」と前置きした上で、最終的にニアがそれを実感するのが巧い。
ブルーノも少しだけ出てきます。「"Tri-and-a-Half-a Lon"という言葉は存在しない」と、こだわりの強い指摘を見せたりもしますが、感覚過敏ゆえに煙でできたイヤーマフを装着しながらも、みんなのレースを観て楽しんでいる様子がほっこりしますね。健常者と障害者の共存や助け合いは未就学児向け番組にとても重要な描写だと思います。
【チェックポイント】
ディーゼルがカモと戯れる様子は、オリジナル第20シリーズ『ディーゼルのひみつ』を思い出しますね。オマージュなのかな。いや、そうでもないか。
ショートアニメの出来事が本編に引き継がれているのも良いですね。『カナとニアとチョウ』以来、カナにとってのお気に入りが蝶々と過ごすことになりつつあるようです。このほかに『ギーギーモンスター カーリー』や『リラックスしたいカナ』、『Tunnel Trouble』などでも確認できます。
全体的な面白さ:☆☆☆
遊び心:☆☆☆
キャラクター:☆☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆☆
独創性:☆☆
道徳:☆☆☆
【最終的な感想】
確かにこれも機関車が学ばなくて良いものではありますが、それは他のエピソードの大半にも同じことが言えます。それを考えなければ、面白くて教訓の入れ方が絶妙で、ニアの特徴をよく捉えられた良いエピソードです。
総合評価: 9/10
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*1:いまだに石炭を積む描写は無いが。