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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

Thomas & Friends: All Engines Go 第2シリーズ第5話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

AEG S2 E05 『Carly's Magnificent Magnet』『カーリーのすごいマグネット』

監督: キャンベル・ブライアー

脚本: ジョーダン・ガーショヴィッツ

内容: カーリーは、厄介なクレーンのテスを手伝うために磁石を手に入れるが、新しい道具に慣れず苦戦する。

 

【このエピソードについて】

 大大大冒険クラブで唯一、主役回をもらっていないキャラクターはだ〜れだ。

 

 そう、クレーン車のカーリーですよね。出番が多いので忘れがちですが、カーリーの名を題した作品、または彼女が主役になった回は一度もありませんでした。確かに『あらしのなかのサンディー』が最も映像に映っている時間が長いです。でも基本サンディー主体の話で彼女はサポート役にすぎませんでした。

だからこそ、今回の話を楽しみにしていたんです。新キャラクターのテスも登場するのでとても気になっていました。

 

©︎Mattel

 ようやくカーリーに列記とした主役回が舞い降りましたね。別に私は従来のシリーズにしろAEGにしろ彼女のファンというわけではないのですが、港のガントリークレーンから線路を走るようになった今、どう話を広げていくのかずっと気になっていました。ただの「手」の役割でも修理屋サンディーの助手でもない彼女自身の活躍を。

 さて、まあ見ての通り、カーリーが使う磁石は、かつてブッチが一時的につけていたものとそっくりですし、あらすじからも、S15『くっついたトーマス』にかなり似ていますよね。なぜか磁石をつけてもらったばかりのブッチと、それをなぜかサポートするトーマスが、なぜか磁石の使い方を聞かず乱暴に磁石を振り回して失敗するお話です。当時は大好きなブッチが主役になったのを見て発狂していたのですが、今見るとプロットはかなりひどいですね…。

磁石に苦戦する共通点はあるものの焼き直しかと言われたらそうではありません。

 

©︎Mattel

 テーマとなっているメッセージは「失敗から学ぶ」こと。これは『きかんしゃトーマス』シリーズが広く全体を通して行ってきたものですね。仕事でもなんでも良いです。一度も触れたことがない機械や、何か新しいことを学ぶ必要があるときに覚えるまでに苦労したことがある人には共感しやすいものですよね。また、カーリーに共感できない"初めから有能"な人、あるいは初心を忘れた人はテスに共感できたのではないでしょうか。

挿入歌「A Mistake is What it Takes」もその人生のテーマを大いに含んでいます。メロディは普遍的な未就学児向けっぽいですが歌詞はしっかり中身があります。「To learn don't pump the brakes, A mistake is what it takes (学ぶためにはブレーキを踏まないで、ミスは必要なことだ)」や、「So I get stronger (それでわたしは強くなる)」という歌詞が好きです。単純でもコツと覚えがいる作業は習うには慣れろなので、この歌の導入自体が理に適っていると言えます。

当然この歌は、カーリーに言い聞かせているのですが、クレーンのテス側にも教えられることですよね。

 

©︎Mattel

 このエピソードの最大の問題点は、テスがこの件に関して何も学ばないことだと思うんです。仕事が山積みで手いっぱいな状況下なので、素早く仕事ができるテスがイライラするのもよくわかるし、テス側の意見も正論ではあります。加えて子どもがこのように不機嫌になりやすいのも表現としてはリアルです。

でも彼女が追い込むように乱暴にコンテナを降ろしたり、失敗するカーリーを嘲笑うのは観ていて気持ち良くはないですし、サンディーと話が通じていない、あるいは一方的な対話が続くせいで、正直に言うと最後までテスが魅力的に感じられないんですよね。

 ちまちま作業をしている小さな車両を文字通り見下して、意地悪や思いやりのない行動を起こすパターンは、オリジナルの第5シリーズ『クレーンのクランキー』と共通しています。でもそのエピソードでは最終的にクランキーが意地悪したことを反省しているし、コミカルな皮肉でスカッとする場面もあって、終わる頃は気持ちがいいんです。

テスも、最後にはサンディーを磁石で助けたカーリーを感心しますが、「誰でも失敗から学ぶこと」に関しては触れないままだし、カーリーに意地悪したことについて反省する様子もないのです。最終的に仲良くできて終わりよければ全て良し? もやもやします。コンテナに囲まれたところをどうにかしたカーリーに何かもう一つ言うことあるでしょ

 不慣れな仕事や初々しい苦労に気づかない厳しいまたは自分勝手な上司が存在するのは現実的です。それが"子ども"なら、なおのこと。でも、おもちゃを売る側が本当に放ったらかしでいいの? テスに対するキャラクター性の第一印象はかなり悪いのですけど。長い目で見ていけるほど、彼女に出番はあるのでしょうか。今後成長するお話があるのでしょうか。

 

©︎Mattel

 カーリーの初主役であることに関してはまずまずです。普段は腕力を備えてサンディーを助けている彼女が、サンディーにサポートされたり元気付けられていたのが新鮮でした。性格に関する新しい開発は見受けられなくてちょっぴり残念ですが、彼女がただの有能な優しいクレーンだけではなかったことや、嬉しさのあまり年頃の子どものように振る舞ったり、学びを得て成長する場面が見られて嬉しいです。サンディーを救出する場面は緊張感があり、よくできていました。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 ソドー吊り橋に続き、ケルスソープも2D期では初登場です。しかも小さな運河として。実際、オードリー牧師のケルスソープ・ロード駅とケルスソープの町は川を挟むように位置しています。

駅舎は見られませんが、CG期のケルスソープ・ロード駅の跨線橋が背景にチラリと登場しています。バルストロードが艀として"正しい場所"にいるのも良いですね。

 

©︎Mattel

 厄介なクレーンのテス初登場です。キャラクターの解説の前に声優の話をしましょう。US版が『マイリトルポニー』のシーシェル役で出演したカナダ人のカイア・オズデミール、UK版が英国人のセレステ・ウォルドロンと、まさかの子役、つまりテスが、初の大大大冒険クラブ以外の子どもキャラクターだったことに驚きを隠せません。運河で働くガントリークレーンということでカーリーの何倍も大きいのでもっと年配なのかと思いきや、体格問わず子どもキャラもAEGではアリだったんですね。そりゃ意外だぁ。だってスキフも大人な世界なんだもん。

 そうなると、彼女の厄介な性格は子どもの悪い部分を中心に描かれているのかもしれません。彼女は働き者で有能なクレーンですが、ボス気質でせっかちな性格が災いして、自分のように素早く行動しない車両に強く当たりがちであるようです。自分のことを「Tess the best」と呼ぶ辺り、自惚れ屋の面もありますね。

悪い部分というのは、性格が悪というより、大大大冒険クラブの仲間たちと違って思いやりに欠ける=身に付けていない状態のことを指します。自尊心が強くて他の人の不得意になかなか気がつけないなどの傾向や、ちょっとのことで不機嫌になるところなんか共通点がありますし、彼女がまだ育ち盛りなことがわかりますね。

 

 私の不満はテスの性格や声ではなく、この回で一段成長する機会を逃したことです。もちろん、彼女のキャラクター性から大きく離れない範囲で、ね。彼女はサンディーよりもずっとキャラクター性が濃く、多くの可能性を残しています。「(やったことが)子どもだから仕方ない」とは言わず、この作品のトーマスほか子ども機関車たちのように、日々学びを得て成長していく様子を見せていたら、より魅力的だと思うのですが、どうでしょう

今後、テスが何かを学ぶエピソードがあるのかどうかが今一番気になっていることです。それがなければ、私の中でテスは最も好きじゃないキャラクターに入るかもしれません。

 

 それにしてもカーリーがガントリークレーンから鉄道車両になったと思ったら、オリジナルのカーリーと同型の新キャラクターが出てくるとは思ってもみませんでしたね。おもちゃの型を使い回したいのが見え透いているような気がしなくもない。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

遊び心:☆☆☆

キャラクター:☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆☆

独創性:☆

道徳:☆☆

 

【最終的な感想】

 少し惜しい部分があったり展開は平坦ですがそれでも良いエピソードだと思います。カーリーの主役回としても機能していました。別にクレクレではないけど、キャラクターをより魅力的にするために、今後はカーリーの新しい開発と、彼女の単独主役に期待したいところですね。あとテスも。

 

総合評価: 7/10

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