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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

Thomas & Friends: All Engines Go 第2シリーズ第16話レビュー

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

 

AEG S2 E16 『More Than a Pretty Engine』『キレイなだけじゃない』

監督: キャンベル・ブライアー

脚本: ジャヤ・ラムダス

内容: 山の機関車アシマは嵐で崩れ落ちた谷を片付けようとするが、トーマスたちは彼女のペンキが汚れてしまうことを心配する。

 

【このエピソードについて】

 AEG第2シリーズ第3話でソドー島に来たアシマですが、今のところまだそれ以降の出番がないですよね。最も、『走れ! 世界のなかまたち』が好きな人には申し訳ありませんが、オリジナルのシリーズでさえ、アシマの個性は見た目以上のものがなく、当たり障りのない出番しかありませんでした。

そんな彼女を、今後AEGチームは魅力的に描くことはできるのでしょうか? 純粋な疑問と一抹の不安を胸に、アシマのエピソードを見ていきましょう。

 

©︎Mattel

 なんだよなんだよ、AEGの方がアシマと"Girl's Power"をうまく表現できているじゃあないか!! …信じられますか? アシマが初登場して6年経過し彼女の設定が初めて本編で活かされたんですBWBA期ではいかにアシマの開発に関して怠惰だったかが可視化されましたね…。

このエピソードで描かれている、"南インドの山岳鉄道で働いていて怖いもの知らず"という設定は、アシマがフランチャイズで初登場した時からある設定でした。にもかかわらず、初登場の『走れ! 世界のなかまたち』では、トーマスに「あなたはあなたでいるから素晴らしい」という教訓を与え友情を深めた以外、ほとんど彼女の特異点はないし、インパクトの割に性格面では決して深くはなく、物語にもあまり貢献できておらず、個人的には面白くないキャラクターでした。

BWBA期では更に退屈な存在になり、彼女が何者であるかさえとうとう描かれることもなく、結局アシマの掘り下げが適切に行われたのは、YouTubeのショートアニメ『Great Race Friends: Near and Far』シリーズ(日本未公開)のみで、私自身かなり失望しました。女性キャラクターを開発するのはそれほど難しいことなのかと勘繰るほど。

 ヨンバオの設定の継続もそうでしたが、オリジナルとの連続性がないAEGで行われるのは奇妙に感じることです。でも、一部のキャラクターを除いてほとんど空っぽだった国際キャラクターの設定を拾って、正しく活用されたのは素直にとても嬉しいです。

 

©︎Mattel

 本作の特徴は拾われた設定だけでなく、このエピソードがフランチャイズ初のアシマの主役回ということです。これをCG期で観たかったんだけどなあ…!!

『せんろをはしるスキフ』と同じく、物語の一番初めからアシマに焦点を当てて、後からトーマスたちと絡ませているんです。それで正しく設定が拾われているほか、彼女をより面白く描写しているのが気に入っているポイントです。

 

©︎Mattel

 サブタイトルと物語のテーマは「More Than a Pretty Face (可愛い顔だけじゃない)」という言葉に由来します。可愛い/綺麗なルックスだけじゃなく、はるかに良い資質/才能を持っている事を意味します。「Don't Judge a Book by It's Cover (本の表紙で判断してはいけない)」の可愛い人バージョンみたいな感じ。

今回のテーマは、多くの場合は、女性に関係するものです。か弱いと思われやすい可愛らしい見た目の男性も共通しますね。綺麗でいる/いたい人の中には、それ以上のものを見せたい人だっているはず。自分はできることがいろいろある、あるいは得意な事が目の前にあるのに、可愛いからってアイドルや人形扱いされて何もさせてもらえないと腹が立ちますよね

 終盤では、みんなから綺麗なままでいるために手伝わなくていい=「アシマは何もできないと同等」に思われていることに気がついて、アシマが激昂する場面があります。

小学校で同じ経験があり常に存在をアピールしたい私はとても共感をする場面でしたし、同時に彼女がキャラクターとして確立した瞬間とも思いました。機関車は男女関係なく、アシマが煌びやかな車体だからこそですし、加えて「助けになることに幸せを感じる」当たり障りのない性格とうまく結びつけられていますね。

気遣いをするのは社会性があり良いことです。でも自己顕示したい人にとって、過度な心配は失礼に値する場合があるんですよね。要はやり過ぎなければいい話です。相手の声に耳を傾けることを忘れないようにしましょう。

 

©︎Mattel

 トーマスたちのほうも、ただどこからともなく閃いたことではなく、AEG第1シリーズ『かわくまでまてない』の経験を生かそうとしているのが良いですね。サンディーも言及している通り、複雑なペイントを修復するのが楽ではないのも想像に難くないですし、彼らの対立と気遣いの入れ違いには納得がいくし、面白かったです。お互いに、できること、それから気遣いの理由を知る描写がビターな感じで好きです。

 問題があるとすればエンディングですね。まず、シリーズを通して泥にはまりまくるトーマスとディーゼルが考えなしに泥に突っ込むのはバカに見えます。あと、大前提としてアシマの方も故意ではないし、怒らせたのはトーマスたちの過ぎた気遣いが原因。しかし、激怒して汽笛を大きく鳴らしたことで大岩を転がせる原因を作ってしまい、危うく彼らを危険な目に遭わせそうになったことを謝る描写も必要だったのではないかと思います。

まあクランブル・キャニオンを片付けに来ている時点で彼らも想定内かもしれませんが、それで地面が揺れるので、エンディングは少しモヤモヤしました。無礼に対して我慢をしろとは決して言わないけど、怒り過ぎるのが良くはないことを学んでもバチは当たらないんじゃないかなと。アクション演出のためだけに激昂させたと思わせないようにね。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 『アシマがソドーとうにやってきた』ではトーマスに会いに来たことを喜び、一緒にダンスすること以外は特に描写されませんでしたが、このエピソードによってアシマはより魅力的なキャラクターになりましたね。

いつもはインドの山岳鉄*1で働いていて危険と直面することもあると書かれている通り、倒木やジェームスから噴き出す水にも物おじせず、積極的に手伝おうとする姿勢を見せるほか、役に立つための自己顕示欲が強めであることが新たに追加されました。これは「あなたはあなた」を提唱したオリジナルのアシマでも違和感がない開発だと思います。根本からブレてないですし。彼女が必要以上に腹を立てることを考えると、まだ成長する余地を残しているとも言えます。

 

©︎Mattel

 内部シリンダーの位置から吹き出ているように見えますし、笑い事ではない故障の仕方ですが、ジェームスから蒸気と水が漏れる場面はちょっぴり面白かったです。

普段ナルシストな分、AEGのジェームスは『おそ松さん』のカラ松みたいに不憫な扱いで面白さのバランスを保てている感じですが、そろそろ彼の活躍する場面も観たいですね〜。台詞と役割は増えてきても、脱線したり、貨車の積荷を配達途中でこぼしたり、渋滞に巻き込まれたり、自分の仕事が事故で増えたりと未だ不憫な役回りばかりなので。

 

©︎Mattel

 クランブル・キャニオン(吹き替え版ではクランブルの谷)は、劇中で最も落石の多い場所で、たびたび丸くて大きな岩が転がってくるのですが、これはオリジナル第5シリーズ『いわのボルダー』リスペクトなんですかね? 

毎回思うんだけど、ここ永久封鎖したほうがいいんじゃないかな…。

 

 

全体的な面白さ:☆☆

遊び心:☆☆☆

キャラクター:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆

アニメーション:☆☆

独創性:☆☆☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 6年経って初めてアシマが何者であるかを描写したのは奇妙に思えますが、良いエピソードでした。アシマ好きには推奨したい物語です。巧妙に彼女を描いたジャヤ・ラムダスは本当にいい仕事をしました。

個人的には、これは彼女の序章に過ぎないと考えているので、より多くの活躍を見たいみたいと思いました。まあ美しいエンディングのためにヨンバオをたったの2話で退場させてしまった*2AEGがこれ以上のことを用意しているとは考えにくいですが、ヨンバオをより一層共感しやすいキャラクターに開発したこともありますし、できる表現が増え次第、山の機関車として更に面白く深掘りしてくれることに期待したいところですね。

 物語はスリーストライク寄りですが、面白い瞬間がいくつかあるほか、メッセージ性があって好感触でした。番組の脇役に焦点が当たるのは本当に良い傾向です。ぜひそのまま続けてくださいな。

 

総合評価: 9/10

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てMattel, Inc.に帰属します。

*1:彼女の実機と実際の鉄道は、カルディーフェル鉄道と同じく、ラック&ピニオンで山を登る物です。

*2:再登場する可能性を残しつつ。