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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第20シリーズレビュー第5回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。

 

 

 

S20 E02 『Letters to Santa』『サンタクロースへのてがみ』

脚本: ヘレン・フォラル

内容: パーシーはクリスマス・イヴにサンタへの手紙を届けようとするが、トンネルが雪崩で塞がれたためハロルドが仕事を終わらせる。

 

【高評価点】

・S2『パーシーとハロルド』の精神的続編、そしてそのコンビネーションと対立の巧みな描写。

・原作絵本第11巻『ちびっこ機関車パーシー』の挿絵を基に描写された回想シーン。

・道徳「クリスマスは親切にするもの」を押し付けずに書かれている。

 

【低評価点】

・パーシーをソドー島全域の郵便配達担当にするには負担が大きすぎると思う。

 

 

 

【このエピソードについて】

©︎Mattel

 パーシーとハロルドの関係性が戻ってきました! 何年ぶりでしょうか。ぜるさん彼らの絡み大好きなんですよね。他のファンも待っていたことだろうと思います。

線路以外に価値を見出そうとしない機関車パーシーと、空の過大評価はもちろんのことかつては鉄道を時代遅れと見下していたヘリコプターのハロルドとのライバル関係、そしてわずかに垣間見える友情。

トーマスとバーティーみたいに鉄道と道路の対立では第17シリーズ以降毎回のように設けられているし、もはやできることが限られているかのように描かれてきている*1ので、鉄道とヘリならもっとやれることも多いだろうし、この絶妙な関係性とお互いのキャラクター性を大変気に入っています。

 パーシーが分厚い雪の壁に阻まれて郵便物をハロルドに預けることになるまでの展開は1989年の年鑑『Post Early for Christmas』(クリストファー・オードリー著)に似ていますが、幸いにもこちらではパーシーとハロルドの絶妙な関係と対立を描いています。

 

©︎Mattel

 S3『おくれたゆうびんしゃ』や『パーシーとこうずい』で懲りたのか、第5シリーズ以降のハロルドは鉄道を見下さなくなりました。そこはこのエピソードでも守られており、S18『トードのぼうけん』のオリバーみたいに初期の性格をぶり返すことなどが無いのが、まず良いところです。

パーシーとハロルドの関係性は、S6『うんのわるいハロルド』で既に和解済みではありますが、過去の出来事を無かったことにするのではなく、ハロルドの天然な悪気のなさが、雪で手こずっておかんむりなパーシーの神経を逆撫でしてしまい、見下されていると勘違いして一方的な対立を生んでいるのがとても良いですね。雪を追加したことで対立がより強くなっていますし、どちらか片方がバカみたいに描かれるよりよっぽど良いです。

 

そしてS2『パーシーとハロルド』での競走に「勝った気がしていなかった」という語りも気に入っています。これは『エドワードのおてがら』と同じで、該当の過去作を綺麗なハッピーエンドとみなしているかどうかで賛否は分かれるかもしれません。思えば、実際には競走はフェアな条件ではないですし、ハロルドが悔しがるところを直接見たわけでもないですからねこの対立に加えてクリスマス精神の道徳が紐づけられているのもこのエピソードを特別で素晴らしく感じる所以の一つなのですが、先にこの件についてお話しさせてください。

 

©︎Mattel

 それは、S2『パーシーとハロルド』の回想シーンです。『ブルーマウンテンの謎』を境に、初期作品の回想や言及、再現が増えてきたこのTVシリーズ。古いファンには懐かしさを覚えさせられるし、若いファンは過去に何があったのかを知ることができます。時には不要な物もある中、今回のはパーシーとハロルドのオリジンを手短くしかしちょうどいい長さで紹介するためにあるもので、本当に素晴らしかったです。

 

特に素晴らしいのは、TVシリーズの再現ではなく、パーシーのクローズアップを除く全ての回想シーンが、クラレンス・レジナルド・ダルビーが描いた原作第11巻『ちびっこ機関車パーシー』第3話の挿絵を基にアニメートされていることなんです。しかもよく見ると、絵本特有のゴワゴワした荒い紙面まで再現されているんです。

この少しだけの場面から、制作チームが原作にできるだけの敬意を払おうとしているのがわかりますね。

 

©︎Mattel

 他のエピソードでも言えることなのですが、パーシーの郵便配達の担当箇所がソドー島全体と設定されていることが非常に惜しいです。特に今回は、冒頭の場面で"北極に住むサンタクロース"へ届ける経路をマップで表示しているため、言い逃れが不可能です。何度も言っているのですが、パーシーやトビーなど小型のタンク機関車がソドー島全体をフルで走り回るのは負担がかかりすぎだと思うんです。

原作設定ではパーシーはファークァー線担当とされていますし。S3『おくれたゆうびんしゃ』のように本線担当がヘンリーやジェームス、ウェルズワース線ではボコ、アールズバーグ線ではデイジーといった具合で分担すれば、郵便配達の場面でパーシーを意地でも押し込まなければならない状況よりも、多くの機会を作り出せるはずです。

 あと、少し些細なことですが、アングルによっては雪かきのせいでパーシーの口が迫り上がっている場面がちょくちょく挟まれているのが違和感がありますわざわざ口を映そうとする必要があるのなら、雪かきを小さくしてみてはいかがでしょうか。また、表情によって眉の大きさが変わるのも違和感です。

それ以外のアニメーションや照明は大変優れています。先程の回想シーンはもちろんですが、夜の吹雪は見やすくて、車体の暗いヒロも映えて見えます

 それにしても今回CG期では珍しくハロルドがドライオー駅に停泊しているんですよね。臨時なのかはてさて。ドライオーの飛行場はまだ活きているようで何より*2

 

©︎Mattel

 道徳については完璧だと思います。第17シリーズ以降、パーシーは「クリスマスにはみんなに親切にするものだ」と説くキャラクター性が開発されました。今思えば、S17『きえたクリスマスのかざり』の教訓はやや押し付けがましい物でしたね。当時のレビューでは、ディーゼル10やシドニーの登場にばかり気を取られていて、あまり物語に触れられませんでした。

今回はパーシーとハロルドの関係性と、パーシーの親切心にこれが加えられているので、より自然で心が温まります。思いやり、助け合い、友情を深め、そしてどちらにもそれぞれの方法で役に立つのだというメッセージが素晴らしいです。『パーシーとハロルド』、『うんのわるいハロルド』からさらに進展していることを実感させられます。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 メインランドから北極へプレゼントを届けるためにジェレミーが使われたのが好きです。残念ながら模型のプロモーションでもCGモデルでもなく、Trackmasterというおもちゃの宣伝用画像でしたが、その手元にあった資料でやらなければならなかったのでしょうね。

ジェレミーもそのままCGシリーズに登場してほしかったですね。キャラクターデザインが難しかったのかもしれませんが。

 

©︎Mattel

 ヴィカーズタウンからメインランドのある地点までの郵便配達がヒロってところも好きですね。S17〜S20でヒロがメインランド担当として動くことになった経緯とかあれば知りたいですね…。ちなみにこれ以降、なぜかヒロは第24シリーズまで出て来なくなります。

 

©︎Mattel

 ソフトサイドトラックのおもちゃ羨ましいな…。ちなみにこのトラックと恐竜のおもちゃ、あとのシリーズで他の場面に出てきます。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

リアリズム:☆☆

キャラ活用:PERFECT

BGMの良さ:GREAT

アニメーション:☆☆☆

道徳:GREAT

 

【最終的な感想】

 パーシーが島全体の郵便担当という問題点はありますが、それが些細に思えるほど物語がよく、音楽も相俟ってとても温かい気持ちにさせられます。パーシーとハロルドのライバル関係をまた見られたのは良かったし、進展があったのも良くて、魅力に満ち溢れています。私の中でお気に入りのパーシー、またはハロルドのエピソードの一つになりました。

 

総合評価: 10/10

 

 

【第20シリーズ総合評価】

1 うたうシドニー 9/10

2 サンタクロースへのてがみ 10/10

3 トビーとフィリップ 8/10

4 ヘンリーか?ゴードンか? 10/10

7 ディーゼルのひみつ 9/10

 

 

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:S19『やまのむこうがわ』

*2:S24では子供達の遊び場になってたし