※この記事にはネタバレが含まれています。
また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。2016年に書いた感想を書き起こしたものです。
S20 E09 『Saving Time』『じかんをせつやくしよう』
脚本: アンドリュー・ブレナー
内容: サムソンは港を往復する時間を節約するために石材の貨車を一気に運ぼうとする。
【高評価点】
・道徳『時間効率』『行動する前に考える』。
・トーマス、ピーター・サム、サー・ハンデルの生意気さと、スタンリーの静かな思いやり。
【中立点】
・トーマスを補機につけたまま港まで牽いていくのは面白いが、注意されるよりも事故を起こした方が身につき方が違ったのではないか。
【低評価点】
・サムソンが成長する気配がない。
【このエピソードについて】
サムソンはフィリップ同様、ファンの間でも好き嫌いが分かれるキャラクターだと思います。個人的には、厄介なおじさんだけど、そこが可愛くて好きで、愛すべきおバカさんだと思っています。けれど、そんな私でも不満なことがあります。
第18シリーズでの彼の最後の出番『サムソンとスクラップ』は本当にひどいものでした。『サムソンがおとどけ』で知ったかぶりをすると混乱と遅れが生じる恐れがあると学んだばかりなのにあのザマなんです。プロダクションオーダーでは順番は逆のようですが、それゆえ、たとえ順番を逆にしても、どちらかが二番煎じになります。
サムソンには、成長できる部分を多く残しているにもかかわらず、まるでその兆しがなくて、鉄道どころか島全体に迷惑をかける厄介者止まりなんです。今回で改善されると思いきや、今回ブレナーはそうさせませんでした。
一方、フィリップは、『トビーとフィリップ』を遂げて、確実に成長していっています。古兵と子どもではプライドがある分成長する差が違うのは自然なことですが、この扱いの差は何なのでしょう。
誤解しないでほしいのは、S6のメイビスとかS10のサー・ハンデルみたいに、最初に出た時とキャラクターの性格を大きく変えろという話ではないんです。マンネリ化しないよう、原作絵本みたいに、学んだことを次に活かして、成熟したり、新しい発展をしてほしいわけです。今期で言えばトビーとヘンリーが原作のような人格を取り戻しましたが、一度学んだことを捨てたりはせず、無意識か否か活かす場面が描かれました。そういうのが見たいんです。
サムソンはおバカを一本調子で貫いている一方、トーマスの出番は素晴らしかったと思います。ええ、本当は支線で働いていてほしいのですが、キャラクターの性格を活用している分には何も問題ありません。トーマスの元々持つ生意気で軽はずみな性格がサムソンの頑固さとぶつかり合っているのが面白かったです。「またキミがやらかしたんだな」と、トーマスがトップハム・ハット卿に全く信頼されていないのは悲しいですが(苦笑)
丘で方向転換せずにサムソンの補機として付くのを見るのも楽しかったです。暴走しかける場面のアニメーションは迫力も良かったし、補機につけたままサムソンが止まらず走っていくのには笑いました。
ただ、もしあのまま事故を起こしていたとしたら、時間の節約のためにいかに自分が馬鹿なことをしたのか、言われる前に気づいて成長できたのではないかとも考えてしまいます。それこそ、『ブラッドフォードってきびしい』の主人公をサムソンにするのはどうかと考えた理由です。
ブラッドフォードといえば、なぜ今回は登場しなかったのでしょうか。地域によっては、この回の放送が先になる場合もありますが、"相棒"とされている以上、何らかの言及が欲しいところでした。オリバーとトードみたいにいつも一緒にいるわけではないんですかね。
パクストンがここでわざわざ出演するのも個人的にはポイントが高いです。彼の役割は、いとも簡単に冒頭に出たスタンリーやディーゼルに置き換えることは可能です。しかし、普段ブルーマウンテン採石場で働いている彼がオイルタンク車を引っ張っていることで、トーマスとサムソンが採石場へ駆り出されている整合性がつきます。
オチでは、貨車1両を引っ張ってどのみち時間の効率にも燃料の効率にも繋がらないという滑稽劇にしなくても良かったと思うんです。確かに、これを疑問系の滑稽劇にすることで、視聴者の子どもたちには、「行動する前に考える」というメッセージ性をわかりやすく学ばせることができます。
でもね、もういいんですよ。サムソンは以前にも十分滑稽なことをしました。今は彼に教訓を身に付かせるべきです。言い方は悪いけど、どうしてこう馬鹿の一つ覚えみたいなことをさせるのでしょうか。
【チェックポイント】
細かいことですが、冒頭でのスタンリーとディーゼルの扱いが好きです。まず、挨拶に対するディーゼルの適当な返事が可愛いです。厄介者が来たぞみたいな感じで。
次に、サムソンの発言が滑稽になる場面ではトーマスとディーゼルが笑っていますが、スタンリーだけは笑い声が聞こえないんですよね。これは彼が単なる無個性ではなく、周りの仲間から好かれている理由を示唆しています。下品な笑いには加担しないという事実は、彼が思いやりがあふれていることを私に思い出させてくれました。台詞が「こんにちは」の一言しか無かったとしても、こういう細かいキャラクターの扱いが本当に大好きです。
もう一つ、ピーター・サムだけでなく、サー・ハンデルも第4シリーズみたいに生意気な性格を取り戻しているのも好きです。原作にしろTVにしろ、2台とももう成熟しているけど、時にはこうやって若返ったかのように頭の堅い古兵を生意気に笑うのも良いものです。他の方も仰るように、この2台がからかう様子は、まるでガミガミ爺さんと会話しているかのようで懐かしい気分を覚えました。
キース・ウィッカムの演技も鼻につかなく、良くなりましたね。日本語吹き替え版は依然として一人称が「私」と礼儀正しい口調なんですけど、まあいいでしょう。
本当に残念なのは、こんなにもスカーロイ鉄道の機関車たちを魅力的に描いているのに、この先で狭軌機関車を主役にしたお話がミリー以外に無いことなのですから。魅力的に描いてくれるだけありがたいですけどね。
全体的な面白さ:☆☆
鉄道らしさ:☆☆
リアリズム:☆☆☆
キャラ活用:☆☆
BGMの良さ:☆☆
アニメーション:☆☆☆
道徳:☆☆
【最終的な感想】
サムソンには本当に成長してほしかったですし、ブラッドフォードが登場する機会を逃したのも残念です。サムソンがソドー島を訪れる話が続いているのに、なぜ彼は今回出てこなかったのでしょうか。
考える前に行動してしまうのがいつものサムソンらしくて(ついでに言うと可愛くて)、シリーズではもはやお馴染みな丘でいつものように立ち往生して、いつものようにギリギリのところで事故を起こさないなど、演出には新しいことは何もなかったし、教訓も申し分ないですが、個人的にはかなり平凡でした。
総合評価: 5/10
【第20シリーズ総合評価】
1 うたうシドニー 9/10
2 サンタクロースへのてがみ 10/10
3 トビーとフィリップ 8/10
4 ヘンリーか?ゴードンか? 10/10
5 コーヒーポットきかんしゃグリン 6/10
6 グリンとスティーブンのレース 10/10
7 ディーゼルのひみつ 9/10
8 ブラッドフォードってきびしい 9/10
9 じかんをせつやくしよう 5/10