Z-KEN's Waste Dump

喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第20シリーズレビュー第8回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。2016年に書いた感想を書き起こしたものです。

 

 

 

f:id:zeluigi_k:20210105192237j:plain

S20 E08 『Bradford the Brake Van』『ブラッドフォードってきびしい』

脚本: リー・プレスマン

内容: メインランドから来たブレーキ車のブラッドフォードは、ソドー島の貨車の面倒を過剰に見る。

 

【高評価点】

・ブラッドフォードのキャラクター性と原語版声優。

・ブラッドフォードのテーマ曲。

・教訓「安全第一」を「規則には理由がある」事と結びつけた道徳。

 

【中立点】

・生真面目なやり方が苦手なトーマスは主役に適しているが、貨車の積載量に関することは既に学びを得ているはずだ。

 

【低評価点】

なし

 

 

 

【このエピソードについて】

f:id:zeluigi_k:20210105192415j:plain

©︎Mattel

 リー・プレスマンの快進撃が続きます! 今回はかなりエンタメ性が高いですね。

 シリーズには既にトードという最高のブレーキ車キャラクターがいて、私の推しの一台であり、模型期でもCG期でもたくさんの活躍を見せてくれています。第2シリーズでは、一発屋で"意地悪なブレーキ車"もいましたね。

 そして新しいブレーキ車キャラクターであるブラッドフォードはどうだったかというと、そうですね、原語版のロブ・ラックストローの声で送る軍隊みたいな口調でいたずら貨車を説得した時点でめちゃめちゃ好きになりました(笑)

何だこの個性的すぎるブレーキ車は!?

 

f:id:zeluigi_k:20210105192534j:plain

©︎Mattel

 ブラッドフォードが面白いのは口調だけではありません。いたずら貨車が悪さをしないようにきっちり見張っているというブレーキ車らしい特徴だけではなく規則全体に厳しすぎるところなんですよね。例えば、オーエンの台から石を積み込む時に、小さな石ころが乗っかると同時にストップをかけ、脳内で暗記しているであろう「公式鉄道安全マニュアル(The Official Railway Safety Guideline Manual)」なるワードを持ち出して「この貨車の積載量はなんと9ミリもオーバーしている!」と指摘します。

 ファンの間では『がんばれタッグス』のブルーノーズのようだという声もありますが、似ているのは軍隊的な口調だけだと思います。ブルーノーズは自己中心的な考えから、あらぬ文句を言って怒鳴り散らかす迷惑で馬鹿なキャラクターであることに対し、ブラッドフォードは非常に極端な思考ですが、これは時間通りに列車を安全に運行するためです。無意味に怒鳴り散らしているわけではないところが好きです。

 

f:id:zeluigi_k:20210105192927j:plain

©︎Mattel

 教訓もかなり鉄道らしさ満点で素晴らしいです。遅れないようにすることはもちろん大事だけど、それ以前に常に安全に運行することを心がけなければなりません。規則には理由があります。それに、トップハム・ハット卿の指摘を擁護するならば、遅れが発生してダイヤの調整を行うよりも、安全性を無視して事故が発生する方が、現場では遥かに多くのコストと労力がかかりますからね。

規則に気を遣っていればブラッドフォードに指摘されずに済むのでしょうけれど、ブラッドフォードの着眼点が凄まじすぎて、トーマスも他の機関車も流石に彼を避けてしまいます。

 主役はトーマスが選択されています。厳しすぎる規則だったり、堅苦しい仲間を苦手とする彼だからこそ、自分を呼び止めるブラッドフォードを知らんぷりで通り過ぎるいたずらっこな様子は実にトーマスらしいなと思うんですが、貨車の積載量に関してはすでにS8『さかな』や、S18『いしきりばのトーマス』で学んでいるはずです。加えて、積載量にも関わらず、事故の内容は貨車の量と変わらないところや、誰も確認していないかのような石の多さはオーバーすぎてやや違和感を覚えました。『ゲイターとトード』に似ている部分もあります。

この時点でブラッドフォードを一発屋にするつもりだったのなら、せめてサムソンとブラッドフォードが相棒になるまでの物語でも良かったのではないでしょうか

 

f:id:zeluigi_k:20210105192644j:plain

©︎Mattel

 ブラッドフォードの個性的な性格と同じくらい、他のキャラクターの活用も優れていました。特に、貨車の悩みを抱えやすいキャラクターが出てきたのが良いですね。単にブレーキ車が無いからなのでしょうけど、ヘンリーがフライング・キッパーでブラッドフォードを頼りにしようとしたのは、その列車が事故を起こしやすいからでしょうかね(笑)

 ウィフが出てきたのも嬉しいですね。現実的な話をすると、ウィフとエミリーの実機は製造年と牽引力の差が近く、古い機関車の一例です。彼らはソドー島の機関車の中でも特に牽引力が弱くて、ウィフなんて一部の狭軌機関車の力に負けているほどなんです。意図的かはわかりませんが、貨車に苦労する機関車に彼らが選ばれたのが個人的に嬉しい部分でした。

ウィフといえば、ブラッドフォードはなぜ彼の汚いボディではなく、貨車の汚れに着目したのでしょうね(笑) 同じ貨車として見過ごせないのかしら。ウィフの車体が指摘されなかった珍しい事例です。 

 

f:id:zeluigi_k:20210105192805j:plain

©︎Mattel

 普段貨車をひかないはずのゴードンがブラッドフォードの厳しさについて文句を言っている台詞が存在しますが、これは接続列車あるいは後続列車の遅れに対する文句という解釈でいいんですかね?

 

 

【チェックポイント】

f:id:zeluigi_k:20210105192330j:plain

©︎Mattel

 というわけでブレーキ車のブラッドフォード(Bradford)について深掘りしていきましょう。たった1話限りなのにそのインパクトは凄まじいですね。車体番号は「0919」。何か意味はあるのでしょうか?

 彼はトードのような礼儀正しさはありませんが、かといって意地悪やいたずらをするブレーキ車でもなく、どんなに些細なことであっても公式鉄道安全ガイドに従って規則を厳守する、ある意味、本来のブレーキ車らしいキャラクター性ですね。彼の眼光は鋭く、ヘンリーのランプに入った小さな亀裂まで見抜き、準備が整うまで出発するのを許しません。一見傲慢のように見えて、秩序を保っているんですよね。それが迷惑なレベルで度を超えていると。例えるなら、アニメ『星のカービィ』に登場する退役軍人のダコーニョ軍曹みたいな感じ(笑)

でも、ちょっぴり自惚れやな部分も見えます。それは、別れの挨拶をする際、彼が早口で語るのですが、機関車たちから迷惑どころかむしろ感謝されてると思い込んでいるんですよね。「そんなに悲しまないでくれ」と。さては可愛いなこいつ。

厳格さとは裏腹に、別れる際には「停車中の汽笛は禁止だ」と言いながら、感動の別れを演出してほしいのか、特別に赦すなどといった柔軟さも描かれています。

 彼の軍隊的な口調や、原語版の「Oh dear how sad never mind」という早口の台詞は、1974年から1981年にかけてBBCで放送されたシチュエーション・コメディ番組『It Ain't Half Hot Mum』に登場する、ウィリアムズ砲兵曹長が元ネタらしいです。制作陣の中に番組のファンがいるのかもしれません。

確かに調子がほぼ一緒ですね。※演じている俳優はウィンザー・デイヴィス。

youtu.be

 

 デザインは『ブルーマウンテンの謎』及び第16シリーズから登場しているLMSの20トンブレーキ車よもぎ色で塗装したものになっています。元々ナイトロジェン・スタジオのデータにあった黄緑色のもの*1が更新されたような感じの見た目です。特徴的な形のブレーキ車なのでキャラクターになって嬉しいですね。サムソンの実機がいた鉄道に合わせてのデザインなのかな。でも、なぜ両面のランプの数は一致しないんですかね

 彼が登場する場面では、スネアドラムを使った行進曲や、オリバーのテーマの参考になった映画『大脱走』のようなBGMが流れ、軍隊的な様子を演出します。

 

 声優はUS, UK版共にロブ・ラックストロー。ジェームスとは打って変わって低い声です。規律を正すために早口になるところなんかもうさすがで、聞き取りやすい上に気迫に満ちた演技はキャラにハマり役で最高でした。上述のウィリアムズ砲兵曹長の似せ方も上手いんです。

日本語吹き替え版は金光宣明。ヴィニーを除けばシリーズでは聞いたことないような低い声で、常にがなり声で喉が心配になるんですけど、公式サイトのサンプルボイスでこのような声が聞けるので得意分野なのでしょう。津久井教生ニャンちゅうみたいにビブラートなのかも。

 

f:id:zeluigi_k:20210105192448j:plain

©︎Mattel

 細かいことですが、顔つきの有蓋貨車が再登場しました。この調子でどんどん貨車のバリエーションが増えるといいですね。

f:id:zeluigi_k:20210105193147j:plain

©︎Mattel

 サムソンとブラッドフォードが普段どのようにして働いているのかは非常に興味がありますね。極端な思考回路同士でぶつかり合いも起きそうですが、結構相性良かったりして。むしろ、ブラッドフォードという厳しい指摘者がいないからこそ、サムソンがソドー島に来るたびにヘナチョコになるのかもしれません。彼以外からの指摘を非難と捉えたりとか。

 

 

全体的な面白さ:☆☆☆

鉄道らしさ:☆☆☆

リアリズム:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳:☆☆☆

 

【最終的な感想】

 ブラッドフォードのキャラクター性が群を抜いて最高なおかげで、物語は面白く、テンポが良く、現時点でのリー・プレスマンの脚本の中でも『ゴードンとスペンサー』『ディーゼルのひみつ』に匹敵するレベルで好きなエピソードです。彼を一発屋にするにはもったいないと思いますし、是非今後の作品にも登場してほしいです。(*幸い、第22シリーズでそれが実現しました)。

 

総合評価: 9/10

 

 

【第20シリーズ総合評価】

1 うたうシドニー 9/10

2 サンタクロースへのてがみ 10/10

3 トビーとフィリップ 8/10

4 ヘンリーか?ゴードンか? 10/10

5 コーヒーポットきかんしゃグリン 6/10

6 グリンとスティーブンのレース 10/10

7 ディーゼルのひみつ 9/10

8 ブラッドフォードってきびしい 9/10

 

 

※この記事に添付したスクリーンショット著作権は全てマテル社に帰属します。

*1:第16シリーズ『パーティーきかんしゃエミリー』冒頭に登場しています。