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喋りたがりの きかんしゃトーマスオタクによる雑記

きかんしゃトーマス 第20シリーズレビュー第15回

※この記事にはネタバレが含まれています。

また、記事の内容は個人的な意見であり、他者の代表ではありません。2016年に書いた感想のメモを書き起こしたものです。

 

 

 

S20 E15 『The Missing Breakdown Train』『ジュディとジェロームのぼうけん』

脚本: デヴィー・ムーア

内容: ジュディとジェロームは、再び役に立つチャンスを得る。

 

【高評価点】

・ロッキー以外のクレーン車がいることが久しぶりに認められた。

・ライアン、デイジーのキャラ活用と友情の輪の広がり。

 

【低評価点】

・カモメのフンを映す場面は不要だった。

・長い間使われていないのにトーマスがロッキーより先にジュディとジェロームを呼ぼうとするのはとても不自然に感じられる。

 

 

 

【このエピソードについて】

 『トーマスのはじめて物語』のストーリー性と、トーマスとの華麗なバトンタッチからそのまま出番が終了すると思えたグリンが先に第20シリーズに出てきたことを考えれば、クレーン車のジュディとジェロームが再び姿を現すのはもはや時間の問題でした。むしろ第19シリーズから登場しても自然だったほどです。特に『ロッキーきゅうしゅつさくせん』でトーマスがソドー島のクレーン車がロッキーしかいないと認めるのは純粋に不快でしたから。

 「Extraordinary Engines」のエピソードは、最初のヘンリーの話を除けば、出だしが好調すぎる第20シリーズの中では下振れてきています。ジュディとジェロームの冒険はどのように展開されたのでしょう?

 

©︎Mattel

 まず、第13シリーズ以降、ロッキー以外のクレーン車が出てこなかったのでジュディとジェロームという形で活躍の機会が得られたことを嬉しく思います。

 グリンが使われなくなって長い間側線に放置されていたように、ジュディとジェロームもまた、ロッキー来島後に活躍の機会を奪われて操車場に何年も置かれていました。何年も劇中に出ているナップフォード駅の操車場からずっと動いていないというのはちょっと無理がある気もしますが、どこかの駅へ移動させられても使われることはなかったと解釈するのが自然ですかね。普通ならほぼ全ての操車場にクレーン車が置かれているはずなのですが、トップハム・ハット卿は他のクレーン車を売却してしまったのでしょうか?

 そんな彼らを動かすために現れた第2の主役は、ライアンでした。ここでトーマス以外の機関車と交流するのが見られて嬉しかったです。

ライアンはまだソドー島初心者だし、『トーマスのはじめて物語』の来島直後のトーマスみたいに事故が起こる想定ができていないほど楽観的で純粋です。だからこそジュディとジェロームに同情し、気分転換に出かけさせることを最善で必要な親切だと考えたのでしょう。それ以前の機関車だったらこういうことはまずしないでしょうし、後の展開でトーマスを止めてまで彼らに活躍の機会を与えようとしたのも、ちょっとパニックになりやすいライアンらしいと思いました。

 

©︎Mattel

 基本的に物語は、ジュディとジェロームがライアン、オリバー、ダックといった小西部鉄道とハーウィック線の機関車たちに運んでもらって、気分転換にアールズバーグ港や平原といった初めて赴く景色に感動しては、すぐに飽きてしまい文句を言う流れが淡々と続き、信号手の鈍さでデイジーが切り替えられたポイントに乗り上げて脱線する以外、山場はなく、とても平坦です。

 デヴィー・ムーアは、この存在を忘れられた貨車が役に立つまで何年も待たされると何が起こるのかという課題に挑戦し、それを上手く擬人化に当てはめられているものの、ある問題点につまずいています

それは、ジュディとジェロームがおしゃべりで緊急時に敏感なこと以外に、何も新しい要素を追加しなかったことです。

そんな彼らだけを場面に長く残すと何が起こったかというと、景色の評価をするだけになり、実はほぼ個性を持っていないことが露呈します。初期から性格が変わらないことを好む人もいますが、せっかくの主役回なのだから、何か共感性のある新しい追加点がほしかったし、もしそれが難しいのなら、それを補うようにキャラクターの相互作用を増やして深みを与えたら、退屈な作品ではなくなったのではないかと思います。

 

©︎Mattel

 無機物、強いては列車あるあるで、環境に適していないことを仄めかしている場面ではありますがカモメのフンという最低なジョークを映すのは不要でした。おそらくこれは、S19『なぞのきかんしゃジェフリー』のゴムボールの意味不明なオチみたいに、脚本の中になく絵コンテの段階で付与されたアイディアなのでしょうけれど。なにも見せなくたっていいじゃん。

 環境といえば、もう長く使われていないはずで、汚れた車体を見るに修理されているかも怪しい状態なのに、トーマスがロッキーよりも先にジュディとジェロームを呼びに行こうとするのは理屈に合っていないと思います。『トーマスのはじめて物語』との継続性を保ちたかったのかもしれませんが、この前提がうまく行っておらず、ロッキーが他の現場で忙しいみたいな理由づけが必要でした。

まあトーマスの発言からレスキューセンターが軽視されていたのはちょっと面白いですが。S19『ロッキーきゅうしゅつさくせん』の事態を見たからなのでしょう。

 

©︎Mattel

 そうそう、ライアンとスキフが会話するのは意外にもこの回が初めてなんですよね。プラレールでは2台セットで過去に販売されていたんですが、ゲイターとマリオンと同じで、映画では絡みがありませんでした。

ジュディとジェロームに面白い形と陰で言われながら、スキフも彼らに対して実は同じことを思っていたのがちょっぴり面白かったです。

 

©︎Mattel

 私がこのエピソードで一番好きなのは、彼らの主役回ということだけでなく、ジュディとジェロームが新しい居場所を見つけられたことです。トップハム・ハット卿が彼らの存在を忘れていたのは全く気に入りませんが、ここから段々とすでに完璧なハーウィック線が賑やかになっていくと思うと、ワクワクが止まりません。これにより、島の西側はジュディとジェロームに、東側はロッキーが任されるということですかね。

 道徳は、ジュディとジェローム責任能力に加えて、子どもたちと関係があるものでよかったです。トップハム・ハット卿も彼らの意見を汲み取ることで、より感動的なエンディングを迎えられたと思います。そこまでの物語がもっと深かったらよかったのですが。

 

 

【チェックポイント】

©︎Mattel

 ジュディとジェローム(Judy & Jerome)について少しお話ししましょう。彼らについては『トーマスのはじめて物語』のレビューでも話していますが、グリンに比べればまだ出番はあるものの、性格を語るには台詞が少なく不十分でした。

 普段、彼らは操車場で深い眠りについていますが、初登場回と今回のように緊急事態に敏感で、通常ならその時にしか目を覚ましません。しかも数秒で目を覚まします。真面目な性格であるように描かれていますが、長年呼ばれていないので今回はライアンの提案にのりました。

2台とも起きている時は穏やかですが、起きている時が短いのか、救出以外に興味がないのか、最初は景色に感動しても次第に評論していき、やがて飽きてしまいます。また、いつも早口で喋るほどおしゃべり好きです。劇中では熟年夫婦のような姿で描かれていますね。実際には同型機であることや名前的にも、双子か姉弟か何かかもしれませんが、書籍にはそのような情報がなく実は姉弟かどうかについても不明です。

 オリバーはまだしも、特にダックのような生真面目な機関車が緊急時以外にクレーン車を易々と採石場へ送るなんてしないと思うんですが、それができたということは、ジュディとジェロームが得意の話術(単なるお喋り)で丸め込んだ可能性がありますね。

 

 声優は『トーマスのはじめて物語』から変更はありません。放送時に大井麻利衣さんがTwitter(現X)で興奮していたのが微笑ましかったです(笑) 日本語吹替版の声優も素晴らしく、大井麻利衣と秋吉徹が原語版に近く、元気な老人を演じられています。

 

©︎Mattel

 いつも通りアニメーションと音楽は素晴らしいです。牧草地や背景の草木の細やかさ、海の質感などは、今ではナイトロジェン・スタジオが『ブルーマウンテンの謎』を制作した頃のように優れています。

 特にアールズバーグ港の場面は、物語に進展を与えないとはいえ、実際に赴きたくなるほど観光のコマーシャルみたいで、世界観の作りこみに感動を覚えました。

 

©︎Mattel

 カメラワークもよかったですね。個人的には、信号手が大慌てでポイントを切り替えるときのダイナミックなカメラワークが、緊迫感と臨場感の演出はもちろん、古き良きカートゥーンっぽくてとても好きです。

 

 

全体的な面白さ:☆

鉄道らしさ:☆☆

リアリズム:☆☆

キャラ活用:☆☆☆

BGMの良さ:☆☆☆

アニメーション:☆☆☆

道徳:☆☆

 

【最終的な感想】

 最初に見た時は綺麗な映像と共に素晴らしいと思いましたが、徹底解剖した際にとても平坦すぎることに気づいて評価を下げました。ですが、ヒューゴの物語に比べればそれほど悪くありません。デイジーの救出シーンでは微妙にノスタルジーを覚えましたし、登場キャラクターの大半が小西部鉄道で、トーマスが脇役だったことを気に入っています。繰り返しになりますがこれからのハーウィック線の登場に期待したいです。

 

総合評価: 6/10

 

 

【第20シリーズ総合評価】

1 うたうシドニー 9/10

2 サンタクロースへのてがみ 10/10

3 トビーとフィリップ 8/10

4 ヘンリーか?ゴードンか? 10/10

5 コーヒーポットきかんしゃグリン 6/10

6 グリンとスティーブンのレース 10/10

7 ディーゼルのひみつ 9/10

8 ブラッドフォードってきびしい 9/10

9 じかんをせつやくしよう 5/10

10 ライアンとデイジー 10/10

11 やみにひかるヘンリー 9/10

12 おそろしいようかい 2/10

13 みらいのきかんしゃ -3/10

14 ヒューゴとひこうせん 6/10

15 ジュディとジェロームのぼうけん 6/10

 

 

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